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韓国の古着屋「ASYM」の見つめる先には天才デザイナーの美学があった

今や韓国ファッションは大きな革新の真っ只中であり、LVMH2024セミファイナリストのJiyongKimやパリコレクション2024を沸かせたJuun Jを始め、海を越えた世界中で盛り上がりを見せている。今回紹介するのは、コムデギャルソンやイッセイミヤケなどの日本のブランドから、ハンドメイドブランド「tori」を取り扱う韓国梨泰院の古着屋「ASYM」。同店のオーナー、손두송(ソン・ドゥソン)は自身で「韓国で最もユニークな地域」と評する梨泰院において、どのようなファッションを提案しているのだろうか。日本の古着屋との合同ポップアップなども行う彼の日本への尊敬や関心にも迫ったインタビュー。

天才デザイナー達の洋服を買いたかった

ーASYMの成り立ちについてお聞かせください。

始まりはソウルの広蔵市場です。幼なじみと一緒にブティックというお店を3年間営業した後、自宅でヴィンテージのオンラインショップ「itaewonsalgosipda(梨泰院に住みたい)」を始めました。そこでは定価制を導入していて、ジャケットが20,000ウォン、トップスが15,000ウォン、パンツが20,000ウォン、コートが35,000ウォン、レザーが40,000ウォンで、一部の高級ブランドは+10,000ウォンに設定していました。

梨泰院(イテウォン)にあるASYMは、一時オンラインヴィンテージショップを運営した後にスタートしたデザイナーズ、ヴィンテージ、アーカイブのコンセプトショップです。オンラインサイト時代に多くの人々が愛してくれていた事もあって、ASYMのサイトドメインはitaewonsalgosipda。ちなみに、梨泰院に住みたかったのは本当です(笑)。

ー様々なお店を経て、ASYMがあるのですね。ASYMはとてもシンプルな名前ですし、視力検査のようなアイコンとも相まってキャッチャーですよね。名前やアイコンのデザインにはどんな意味があるのでしょうか?

ASYMは、海外のヴィンテージ市場で現在も使われているasym(asymmetric)という言葉から名付けました。これは様々な文脈を持つヴィンテージを一つの言葉にまとめるために使われています。アイコンはその通りで、視力検査で使われる図形です。視力検査は多方向に向く図形ですが、ASYMのアイコンが5時の位置にあるのは、左右非対称ではありますが、視覚的に負担にならないと思ったためです。ホームページにあるグラフィックも、中心を起点に線を引くと全方向に非対称になるようにデザインしました。

ーショップの商品について質問したいのですが、オーバーサイズ期のメゾンマルタンマルジェラや90年代のコムデギャルソン、アンドゥムルメステール、映画「アキラ」とKADOYAのコラボレーションジャケットなど、見ていてとてもワクワクする品揃えですね。ヒロココシノの豊富な品揃えは日本でも珍しいですが、どの様な基準でアイテムを選定されているのでしょうか?

僕がお店を始めたのは、天才デザイナー達の洋服を買いたかったからです。ただその判断はお客様次第であるので、梨泰院を訪れる人たちの反応が良ければ良いほどそのブランドには引き寄せられます。つまり、店舗キュレーションの方向性は、ASYM1:顧客9といった具合です。

ーそういった数々のアイテムの中で、ソンさんが選ぶおすすめアイテムを教えてください。 

Maison Martin Margiela 2000AW インサイドアウトウールジャケットと、COMME des GARCONS HOMME PLUS 1994AW ボイルドウールピースです。アーカイブアイテムの中でもこの二つのブランドを求めて来店する方もいるほど、高い人気があります。
Maison Martin Margiela 2000AW インサイドアウト ウールジャケット(写真左)
COMME des GARCONS HOMME PLUS 1994AW ボイルドウールピース(写真右)

ー販売されているアーカイブアイテムの中には、オンライン販売を通じて世界中のファンから注目を集めているものも多いようですね。特にどのようなものが注目されるのでしょうか?

特定のラインは非常に高い人気があります。例えば、dezert+のナイロンブルゾンがその一つです。その他は数え切れないほどのアイテムがありますし、かなりランダムな印象です。

今までで最高のコンテンツ

ーホームページには、古着屋としては珍しいインタビューページがありますが、これはどのような取り組みなのでしょうか?

このページの始まりは、90年代に多くのファッションを撮り続けてきた名機「コンタックスG1」というカメラを買ったことです。このカメラを使うことで、服単体では伝えきれない当時の良さや空気感をより鮮明に映し出すことができると思いました。そのため、インタビューページでは商品を購入していただいたお客様や、ASYMのアイテムを使ってコーディネートを組んでくれたお客様について紹介しています。反響も良く、今までの取り組みのなかで最高のコンテンツだと思っています。

ーインタビューをするお客様も含め、お店にはどのような方が来店しますか? 

18歳〜30歳の方が多いので、職業は本当に様々ですね。男女の比率も半々くらいですが、ほとんどのお客様は韓国人です。

ーそういったお客様から、またオーナーであるソンから見て人気のあるアーカイブ・デザイナーズブランドは何ですか?

コムデギャルソンやマルジェラ、イッセイミヤケ、ラフシモンズ、ヘルムートラングなどはやはり人気ですね。彼らが残した功績や、革新的で斬新なデザインや思考は今も評価されていますし、私自身も素晴らしいと感じています。

日本のファッションを謙虚に受け入れる

ー最近では韓国のブランドを着用する日本人も増えており、私たちも韓国ファッションの盛り上がりを肌で感じています。また韓国は多くのトレンドを生み出していますが、ソンさんの視点から見て、韓国はファッションという点においてどのような国なのでしょうか?

韓国のトレンドは多様で、町中を見渡すとさまざまな流行を目にします。私は韓国人の自由奔放で、一度好きになったものを深く追求し、没頭するところがとても好きですし、そういう人たちを見ていると幸せな気分になります。ファッションブランドにおいても盛り上がりを見せていますし、blackmerle、JiyongKim、GOOMHEO、そして当店で扱っているtoritoritoritoriには個人的に注目しています。

過去のインタビューや日本のショップとの合同ポップアップから、日本に対する興味が感じられます。日本のファッションに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?

日本のファッションは、韓国のファッションに比べて圧倒的に先の存在だと思います。日本から学べることはとても多いですし、私は良いところを謙虚に受け入れて学びにつなげています。

ー最後に日本の読者に向けて、メッセージをお願いします。

君たちはとてもかっこいい!これからもずっと幸せに暮らしていきましょう!
 
ASYM
場所:12 itaewon-ro 14-gil, Yongsan-gu,Seoul
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