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「ヘルムートラングやマルタンマルジェラは自分のためにやっている」古着屋CETTENオーナー荒井祥太が示す進むべき道

大阪市北区中崎町に位置する古着屋「CETTEN」。ここは大阪屈指の古着街として有名なエリアで、Helmut Langをはじめ、豊富なアーカイブ・デザイナーズアイテムを取り揃えている。今回は同店の代表である荒井祥太氏の理念と共に、そんなCETTENの魅力に迫る。

テーマは"Ambient"

ーまず初めに、CETTENの成り立ち、名前の由来についてお聞かせ下さい。

 

起業しようと思ったきっかけはコロナ禍の時です。自分と向き合う時間が増えた時期でしたし、大学入学時から起業は目標にありました。ちょうどお店を始めようと思ったタイミングで、当時働いていた古着屋の前の雑居ビルが空き、そこで立ち上げたのがCETTENです。CETTENは、「接点」「縁」という言葉から由来しています。起業への準備の段階で、多くの方の助けから人との「縁」の大切さを感じました。自分のお店でも、お客様や古着、カルチャーなど色々なものと「縁」を感じられる集合体という意味を込めています。
 
ーCETTENで取り扱うデザイナーズ・アーカイブアイテムにはどのような特徴があり、どのような服との出会いがありますか?
 
CETTENでは「Ambient」をテーマに掲げています。「Ambient」はミニマルミュージックと近しく、「主体は空間であって音楽は副次的な役割を果たす」という意味があります。そのため、CETTENでもメゾン・マルタン・マルジェラ、ヘルムートラングなどのミニマルなアイテムが多いです。服は着ることで主体の人間を成長させ、感情に変化を与えるものであると考えますし、それはCETTENのテーマである「集合点」にも帰結すると感じます。
 
ー早速ですが、お店を象徴する、またはオススメのアイテムを紹介してください。

Maison Martin Margiela 白タグペンキ加工デニムジャケット
マルタン本人がフランスのマーケットや市場を回って買い付けたジャケットに、職人が一つ一つ手作業を加えてペンキを施したジャケットです。経年変化によって色落ちをしたデニムの上から黒いペンキを塗り、再び経年変化が楽しめるもので、ボディはLeeのデニムジャケットを使用し、CETTENのコンセプトにもある侘び寂びと循環を象徴するアイテムです。
 
Helmut lang アストロバイカーコーティングコート
ヘルムートラングのこの形は、コットンやモールスキン素材はよく見かけますが、こちらの樹脂加工は珍しいと思います。流通が少なく、デッドストックで、希少価値のあるオススメの一着です。

D.Nart.Ampta 2024SS Collection コート
CETTENで、2024SSシーズンから取り扱いが始まるファッションブランドD.Nart.Amptaのアイテムです。フードや袖の取り外しが可能で、3wayで着用できます。デザイナーの大縫さんはアーカイブに精通しているため、知識を活かした洋服が多く、コレクターにも響くものが多いと思います。

 循環によって社会は成り立っている。

ーご紹介頂いたようなアーカイブ・デザイナーズアイテムを多く取り扱うCETTENですが、10代〜60代の幅広い客層も特徴的です。ブランドの当時を知る層とそうでない層、両者の解釈や着こなしに違いを感じることはありますか?

ありますね。私自身アーカイブを扱う身として、世代間の対話というのをテーマとして掲げています。ブランドの当時を知らない若者はアーカイブに触れて何かを感じとり、それより上の世代は自分たちの世代の服を若者がどう着るのか楽しんでいますし、僕はそうして欲しいと思っています。また上の世代の方はノスタルジックな気持ちで来店されることが多いです。当時は学生で手を出せなかったアーカイブアイテムを10年20年経った今、お目当てに来店されるといったことです。実に、その行為は当店が「Ambient」として成立している要素であり、CETTENの魅力であると感じています。

ー2023年5月には、CETTENにて、THE VANも注目する日本のファッションブランド「D .Nart.Ampta」のオーダーイベントが開催されたことを知りました。このイベントはどのような経緯で実現したのでしょうか?

CETTENは現在、雑居ビルに2店舗を構え、2023年5月には路面店をオープンしました。そのオープンと同時ごろに偶然、D .Nart.Amptaの営業担当の方がお店にいらしてくれたんです。大縫さんとは同い年で、CETTENが取り扱う様なアーカイブ・デザイナーズアイテムがとても好きな方です。また、その時のD .Nart.Amptaのテーマが「和」だったということもあり、意気投合しました。

ーその路面店に関しましても、100年以上前の古民家をリノベーションしていると知り、とても驚きました。コンセプトには、「古着という”過去”のモノを扱い、”現在”のヒトに届け、それぞれが接し、触れ合う事で新たな”未来”を創り出す事ができる」と記されています。時間軸を意識し大切にすることは、ファッションのスタイルや価値観にどの様に影響してくるのでしょうか?

少し人間的な話になりますが、時間軸はCETTENが大切にする循環と関係しています。僕の会社は「J-PEACE」という名前で、日本から平和を世界中に示して実現することがテーマであり、それが自分自身のマインドでもあります。ですので、パンクの様なラディカルで攻撃的なカルチャーもあっていいと思っています。その反対には穏やかな価値観も存在しますし、そんな循環で社会が成り立っていると思います。

僕は平和の威力だけは膨張し続けて欲しいと考えています。そのためには人を認め合うことが重要ですし、認めるためには多くのことを知っていることが必要です。幅広い世代と交流し認め合うためにも、ファッションを勉強して知ることは大切だと思います。

ビッケンは明日の男が着る服

ー過去には、Helmut Lang本人期のアイテムを多数入荷するイベントを開催され、「HELMUT LANG解釈」と記された2つのコンテンツもブログに残されています。彼のファッションに対する考え、イズムのどのような部分に惹かれますか?

彼が自分自身と向き合っているところだと思います。それはデザインとアートの違いも関係していると感じます。デザインを行うデザイナーは人のためにするものであって、ヘルムートラングやマルタンマルジェラは自分のためにやっている。彼らが作りたいものに人がついてくる。デザイナーの立場でアートをやるセンスは特に惹かれるところです。

(THE VAN)唯一無二というか。

そうですね。しかも、彼の服は何歳になっても着れますよね。そこも魅力ですし、僕が今日着ているラングのボンテージパンツも、ミニマルとエッジのバランスが丁度いい。そんな意味で、寿命としては本当に長い洋服です。

ーその他にも、DIRK BIKKEMBERGSのブーツにフォーカスしたイベントを開催されていて、彼への敬意や愛情が伝わってきました。

僕はサッカーも好きなので、ビッケンは本当に好きです(笑)。魅力もたくさんありますし、彼の洋服を着ていたお客様が、"明日の男が着る服"と表現していました。洗練されていて削ぎ落としたイメージのあるラングとは対照的に、ビッケンはすごく無骨です。レザーやシルバー、チェーンの使い方など男心をくすぐる様なデザインで、ブーツに関してもとてもいいスキンを用いてるので、今でも状態よく残っていることが多いです。

(THE VAN)反響はいかがでしたか?

とても良かったです。イベントからビッケンバーグを知ってくれた方もいましたし、懐かしさを感じてくださる方も多かったです。

(THE VAN)今後もイベントの予定はあるのでしょうか?

実は、FINAL HOMEの元デザイナーである津村耕佑さんとのコラボレーションアイテムを昨年の9月から準備していて、CETTENが3周年を迎える今年の5月に販売する予定です。津村さんはテックウェアのパイオニア的存在であり、海外からの注目も非常に高まっています。

とても楽しみなイベントで、期待が膨らみます。最後に、読者やCETTENのお客様に向けてメッセージをお願いいたします。

今日は色々なことを話しましたが、結局は服を通じて成長してきた人間です。それは自分の内面の成長へも同様であり、そこに服の機能性を見出すことも面白いかと思います。それがCETTENの提案でもあるので、ぜひ一緒に向き合ってみましょう。
 
CETTEN

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