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「Helmut Lang50着」コレクターから紐解くアーカイブコレクションの魅力

近年、高騰の一途を辿る古着市場。Levi's、champion、adidasなどを中心に人気を高め、ヴィンテージという表記そのものに価値がつくように、その高ぶりは顕著である。中でもデザイナーズ古着、いわゆるアーカイブアイテムにおいては熱狂的なファンが特に存在する。Maison Martin Margiela、Raf Shimons、Helmut Lang。アーカイブを象徴するこの3大ブランドには、数千万円〜値段のつけられない、目ぼしいアイテムが存在する。

今回はHelmut Lang約50着、アーカイブアイテム計150着を所有するコレクター、深井氏に貴重なアイテム3選を紹介してもらった。現在は会社員として働く深井氏は元々、セレクトショップでのアパレル経験があり、そこでのお客さん、先輩、デザイナーと関わる中で当時(80年〜00年代)の話を聞き、アーカイブコレクションに興味を抱いた。深井氏はアーカイブの魅力について、「今あるデザイナーのベースを見れる、デザインの歴史を知れる」と語る。そんな魅力を彼のアイテム、解説と共に紐解いていく。

2003 Helmut Lang
深井:2003年Helmut Langの、レザースリーブシリーズのスリムシングルポケットデニムジャケットです。こちらは私が一番最初に購入したコレクションピースで、このシリーズはVintage Denim、Vintage Broken Denim、Classic Raw Denimをベースに3カラーの販売がありました。私は2カラー所有していますが、同タイプながら一つ一つ表情が変わり、左の胸ポケットは裏から縫い合わせているため、表から見るとフェイクですが裏ポケットは残っている、そんな面白さがあります。またラングはこれだけではなく、本アイテムでも用いられているレザーをパターン化してデザインしています。よくミニマリズムで有名とも言われていますが、このアイテム以外でも、特に2000年代の初期から引退までのコレクションなどを見てみたりすると、本質はアヴァンギャルドな人間だというのがよくわかります。

1998SS Shinichiro Arakawa
深井:1998年春夏Shinichiro Arakawaの、サラリーマンと蚕シリーズのジャケットになります。こちらは個人的に一番好きな日本のアーカイブブランドで、doubletのデザイナー井野氏も影響を受けたとおっしゃっています。Shinichiro Arakawaは当時の日本社会を見つめたコレクションを多く発表しており、例えば90年代に流行したルーズソックスが特徴的なコギャルや、日本のサラリーマンからインスパイアを受けた作品などがあります。私は当時の時代背景を知らない身ですが、面白く斬新なデザインに衝撃を受けました。

2000SS Ruffo Research × A.F Vandervorst
深井:1998年から伝統的な革製品会社のRUFFOより、当時は若手デザイナーで、現在では有名なRaf SimonsとVeronique Branquinho、A.F.Vandervorst、Haider Ackermannなどが起用され、1人のデザイナーにつき春夏の2シーズン限定でコレクションを発表していました。このプロジェクトの4人目としてA.F.vandervorstが最初に発表した2000年春夏コレクションになります。勇敢で革新的で華麗で、グリーンのスクラブに白のレザージャケットを着るなど、病院の制服を豪華な革のアンサンブルに作り直したデザインのアイテムです。

前衛的なデザインが特徴的なアーカイブコレクション。その魅力あるデザインは様々なシーンに影響をもたらし、ファッションの先端を照らし続けてきた。最先端を走りすぎた結果、当時は評価されなかったアイテムも珍しくはないが、感度あるコレクターによって徐々に人気を博し、流行としてマスマーケットに定着する。そんなファッションにおける歴史の循環、サイクルに触れることも、ファッションを理解する、一つの楽しみ方ではないだろうか。

他にも魅力あるアイテムを多数保有する、深井氏のコレクションはこちらから。 https://instagram.com/kf.aakaibu

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