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「すごい速さでトレンドが移り変わっていく」古着屋purityはファッションの”今”にスポットを当てる

都立大学駅から徒歩1分。閑静な街のとある一室。白一色で構築された空間では、夏にはダブがかかり、洋服が揺れる。古着屋「purity」は2024年3月に実店舗を構え、その独特な空間で実験的かつ繊細なアプローチを展開している。不完全の中にある純粋さ、今を切り取っているアイテム、湿度を感じさせないテンション感。音楽にも情熱を注ぐオーナー、渡邉弘太の感覚から生まれたpurityに迫る。

完全ではない純粋さを再定義

ーまず初めに、purityがスタートした経緯についてお聞かせください。

趣味で集めていた洋服を販売し始めたのがきっかけです。2021年頃までアパレルで働いた経験がなく、以前は音楽活動を主軸に生活していました。ですがコロナ禍の影響で、当時基盤としていた生活スタイルが上手く機能しなくなり、当時は珍しかったオンライン古着屋というスタイルで"purity"をスタートさせました。

ー店名の由来は?

”purity”は元々、音楽活動を行っている時に掲げていたテーマです。純粋さや純度から連想される、不純物の不在や潔癖主義的価値観には、悪意や奇妙さを除外するような排他的な部分が内包されていると思っています。ですので、完全ではない純粋さを再定義したいという意味でお店にもこのワードを起用しました。ボロボロにダメージが入ってしまい衣服として機能しなくなったスウェットも、新品未使用のスウェットも、違う角度から見れば同じ純度を共有していて、そこに優劣はつけられないと思っています。

(THE VAN)アイコンもどこか奇妙で癖があって、purityの価値観が反映されていると感じました。

このロゴは、かねてより尊敬しているデザイナーのpooteeさんに作成していただきました。幡ヶ谷の「forestlimit」というクラブで知り合った方で、彼のデザインの”所在のなさ”に惹かれてオファーさせていただきました。「よれた手描きのようなタッチで、無機質かつ有機的なバランスのイメージ」とかなり大雑把に伝えたのですが、理想的なデザインでとても気に入っています。
ーお店ではどのようなコンセプトを掲げ、どのようなアイテムを取り扱っているのでしょうか?

「今の空気感を切り取ってる商品」をコンセプトとしていますが、世間全体の流れを汲んでというよりかはシンプルに僕個人の感覚でアイテムをセレクトしています。アーカイブと言われている90〜00年代以降のブランドアイテムなども扱いますが、意識しているのは衣服としての普遍性と、オーセンティックな質感です。

(THE VAN)率直に、今のファッションシーンにどのような空気感を感じますか?

当たり前のようにすごい速さでトレンドが移り変わっていますし、現在のシーンを俯瞰して語ることに難しさは感じています。ただ、Y2Kやアーカイブ、テックなどに代表される記号的解釈で、洋服自体に向き合う流れに疲れを感じているのは事実です。デムナ・ヴァザリアやバージル・アブローが定義したストリートの解釈に素晴らしさを感じると同時に、有象無象の記号だけのファッションが溢れてしまったようにも感じています。

ー今の空気感をダイレクトに表現しすぎても少し貧しい気がしますし、PURITYならではの解釈は素晴らしいものだと感じています。もはや今の空気感を「作って」いると言っても妥当な気がしますが、「お店の軸」と「今」の両者を共存する上で意識されていることはあるのでしょうか?

今の空気感という大きいパースペクティブで表現することは、個人店の規模感では正直不可能だとは思っています。そういった中で、今の空気感を「作って」いると言われるのは大変嬉しいです。また、個人が持つ直感的な感覚を信じながら、流行の中で面白さを見出すことを意識しています。これは僕個人ではなく、お客さんも含め、皆が本来持っている視点だと思います。例えば、記号的なファッションに疲れを感じていると言いましたが、2017年頃のGosha Rubchinskiyなども取り扱っているので、結局はそこに面白さを感じるか感じないかだけな気もします (笑)。

ーラインナップには変わり種も多く、それは「ブランド」という記号の境界線を曖昧にするかのような挑戦にも感じます。ナンバーナインのライトアウターやAPCのジップデザインニット、プーマのハイネックスウェットなどブランドとしては珍しいデザインが多いですが、「あえて」のセレクトなのでしょうか?

そうですね。A.P.Cのジップデザインニットはすごくわかりやすい例だと思いますし、ブランドが元々持っていたイメージとは異なるアイテムに惹かれることは多いです。

無機質な空間の中に有機物が混ざっている感覚

ー約3年間のオンライン販売を経て今年3月に店舗をオープンされましたが、店舗化の理由についてお聞かせください。

単純にオンライン販売での限界を感じたからです。自分がピックするアイテムにしても、オンラインやSNSといったツールを通さなければ面白さが伝わらない現状に変化が必要だと思いました。また、小売という比較的誰もが手をつけやすい業態の中で、ステーブルな空間を共有したかったのも理由の1つです。

(THE VAN)都立大学駅という土地を選んだ決め手は?

今の場所は、偶然に立ち寄った不動産の方との相性が良かったのが大きな理由です。ロジカルに考えるといつまでも見つからないと思ったので、場所の雰囲気に任せて契約しました。閑静な住宅街が広がり、生活が根付いているような空気感が気に入っています。

ーオンライン販売と比べて、purityが掲げるテクスチャーや肌感も共有しやすいと思いました。

本当におっしゃる通りで、テクスチャーの共有が一番面白さを感じるところですね。衣服は当たり前のように三次元のモノなので、店舗という空間で見ると、より立体感を感じることができると思います。

(THE VAN)白を貴重とした内装にもこだわりが感じられます。

壁から天井にかけて白一色なのですが、こちらはセメント漆喰という新しい技術で、南アフリカ出身のカーリーさんという左官屋さんにお願いしました。なだらかなのに細かいグラデーションが美しくとても気に入っています。

また店舗自体が狭いので、なるべく広く見えるようにベースとして、白・シルバー・ウッドの三色で構成しようと決めていました。これはショップのロゴと同様に、無機質な空間の中に有機物が混ざっている感覚を意識しています。

音楽とファッションは相対的

ー音楽へのこだわりについてもお聞かせください。”古着屋で今聴きたい音楽”をテーマにゲストアーティストがプレイリストを作るPURITY Playlist On Spotifyでは、DYGL やtamanaramen、JUMADIBAなど今を彩るアーティストが登場していましたね。こちらはどのような経緯からスタートしたのでしょうか?

僕個人、先のGosha Rubchinskiyを好きになったきっかけも、ブランドの音楽をプロデュースしたbuttechnoというテクノプロデューサーの楽曲でした。音楽とファッションは相対的なものだと思っているので、オンライン上でそれを表現するのに効果的なのがプレイリストシリーズでした。まず最初は友人でもあるDYGLにお願いして、そこから音楽の現場で知り合ったクリエーター達にオファーをかけて始めました。

(THE VAN)こちらの企画は仮想の店内BGMと定義されていましたが、実際に店内で流れているのでしょうか?

現在は仮想BGMの企画で紹介された音楽ではなく、僕が個人でセレクトしたBGMを流しています。ビルの一室の奥まった店舗なので、路面店とは違い、天気などの外的要因から隔離されている空間です。それに合わせ湿度を感じさせないテンション感は意識しています。夏に向けてダブが多めにかかっているのですが、清涼感のある軽やかさを感じるダブをかけようとかそんな感じです(笑)。
今後、自分の周りのクリエーターを巻き込んでBGMのみならず音楽のアプローチをお店に持っていこうと企画しています。

ーPARCOで行われたmementoxPURITY 2023のPOPUPでは、会場内で使用されるミックステープを制作し、現在もカセットテープで販売されていますが、どういった作品なのでしょうか?

2023年1月に行われたこちらのpop upは、古物屋のmementoとコンセプチュアルな空間作りを意識して行いました。そこで提示したテーマが「湿っぽさ」を意味する”humid”。これは文字通りの熱帯的な湿度というよりかは、雨粒や水滴といった立体的な湿り気を感じるアイテムやオブジェを提示したいという思いから生まれたテーマです。それに合わせて、音の反響や水っぽさを意識したアンビエントのコラージュ作品になっています。

ーマルチに活動を展開するpurityですが、どのようなお店を目指していくのでしょうか?

まだ店舗をオープンして2ヶ月ほどですが、近所のお客様も少しずつ増えてきました。この場所や生活に根付いたお店にしていけたらと思いますし、同時に自身の直感的感覚をうまく反映できるようなお店としても機能すればいいなと思っています。

ー最後に読者、お客様に向けてのメッセージをお願いいたします。

つらつらとお話ししてしまいましたが、一番大事なのは「この服ヤバい」とか「アツい」とかの肌感覚だと思います。是非お店に足を運んでいただき、楽しんでいただけたら嬉しい限りです!

ーPURITYオススメ3選


99AW HELMUT LANG padded shirts
シルエットの美しいパデッドシャツ。光沢のあるターコイズブルーカラーが使用された希少な1着。

BLESS N°28 net-web check trousers
BLESS N°28らしい独特なデザインが煌るアイテム。グレンチェック柄のパンツに、ネットのレイヤードが施されている。

90s DKNY military jacket 
極めてミニマルなDKNYのミリタリージャケット。立体裁断が生み出す曲線のシルエットが美しく、
短丈のデザインからは今っぽさが感じられる1着。
 
PURITY
場所:東京都目黒区平町1-26-17 ソシアル都立大学105
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